検査のいろいろ

健康状態を調べるための 「健診」

健診は身体の健康状態を総合的に確認し、病気を予防するためのもの

健康を管理をするうえで、検査を受けて身体の状態を把握したり異常を見つけたりすることは非常に重要です。

しかし、「どんな検査があるのかよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、健診がどのようなものかや主な検査項目、健診と検診の違い、検診と人間ドックとの違いなど詳しく解説します。

健診とはどんなもの?

健診とは、健康診断を省略した言葉です。検査によって身体の健康状態を総合的に確認し、病気を予防する目的で行われます。

健診には、「法定健診(一般健康診断)」「特定検診」「任意健診」の3種類があります。ここではそれぞれについて、簡単に説明します。


法定健診(一般健康診断)

法定健診(一般健康診断)は、労働安全衛生法などで義務づけられた健康診断を指します。乳児・妊婦・市民・労働者など属性によって内容はそれぞれです。

事業者は、すべての労働者に対し雇い入れ時と年に一度、定期健康診断を実施しなければいけません。

特定健診

特定検診とは、40歳〜74歳の人を対象に行われている健診で「メタボ健診」とも呼ばれます。糖尿病や脂質異常症をはじめとする生活習慣病の予防を目的に行われ、法定健診(一般健康診断)の項目に加え、血液検査・肝機能検査・血中脂質検査・血糖検査・眼底検査などを行います。

特定健診の内容を踏まえ「特定健康指導」を行い、運動・食事・喫煙などの生活習慣を改善につなげます。

任意健診

個人が自分の健康維持や死亡リスクの軽減を目的に受ける検査で、代表的なものとして人間ドックがあります。

法定健診(一般健康診断)と比べて検査項目が多く、より詳細に健康状態を把握できます。基本的に全額自己負担となりますが、国民健康保険から補助金が出るケースもあります。

健診の主な検査項目

健診では、既往歴や自覚症状の有無などを確認する「問診(もんしん)」や身体測定、聴力検査、血圧測定といった、約10数項目の検査を実施します。

 

代表的な検査項目については下記の通りです。


問診

問診とは、あらかじめ記入した問診票の内容をもとに、医師からの質問に受診者が答えることで、現在の健康状態を確認する検査です。

 

問診表には、これまでかかった病気や治療などの既往歴・最近の健康状態・当日の飲食の状況などの質問項目が記載されています。

身体測定

身長・体重・腹囲を測り、肥満ややせの程度を確認する検査です。

 

肥満は動脈硬化・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。逆にやせすぎの場合は、消化器系または代謝・内分泌系の病気にかかっている可能性があります。身体測定の数値と他の検査項目の結果を照らし合わせることで、病気の特定やリスクの把握などが可能です。

 

測定した身長と体重をもとに、肥満度をあらわす指数である「BMI」を計算し、どのくらい肥満・やせなのかを判定します。腹囲はおへその高さでまっすぐに測ります。

視力検査

網膜に正しくピントが合わない屈折異常である、近視・遠視・乱視が起きていないか調べる検査です。また、白内障をはじめとする視力が急に下がる目の病気を見つけるのにも役立ちます。

視力検査は、視力検査機器や記号や文字が書かれた検査票を使って行います。片目ずつ裸眼視力と眼鏡・コンタクトレンズを使用した矯正視力を測定します。

片目を隠した状態で、受診者がアルファベットの「C」のような記号の切れ目の位置を答えることで、どの大きさまで見えるかを判定する検査です。

聴力検査

聴力を測定することで、音が耳から脳まで伝わるまでの間に何らかの異常がないかを調べる検査です。異常がある場合は、耳などの病気が隠れている可能性があります。

ヘッドフォンを両耳にあてて、高周波の音と低周波の音をそれぞれ、一定のペースで音のボリュームを上げて、聞こえ方を確認します。耳が聞こえない難聴であるとわかった場合は、精密検査を受けて原因を突き止め、治療します。

血圧測定

心臓は、ポンプのように全身に血液を送り出す役割を持つ臓器です。血圧は、血液が流れる時に血管の内側の壁にかかる圧力のことを指します。高血圧は、心筋梗塞や脳卒中の原因となる動脈硬化や腎臓病などの重大な病気に関係しており、血圧を測ることでこれらの病気を見つけることができます。

血圧検査では、手動または電動式の血圧計を腕のひじから上の部分に取り付けて血圧を測定します。

便・尿検査

便検査では、採取した便に試薬を使用し、出血がないかどうか判定します。大腸などの消化管から出血していると、便に血が混ざりますが、量が少ないと人間の目では確認できません。消化管から出血している場合、潰瘍・ポリープ・がんなどの病気の疑いがあります。

尿検査では、主に尿蛋白(にょうたんぱく)・尿潜血(にょうせんけつ)・クレアチニンについて調べます。

尿蛋白は尿に含まれているたんぱく質のことです。腎臓は、血液をろ過してたんぱく質などの必要なものを吸収し、不要なものを尿として排出する働きがあります。腎臓の働きが低下すると尿に含まれるたんぱく質の量が増加します。尿蛋白を調べることで、腎臓病などの病気の疑いがないか判定できます。

尿潜血は、尿に血が混ざっている状態のことです。腎臓・尿路系の炎症や結石、感染症、腫瘍などの病期があると、尿の通り道である腎臓・尿管・膀胱・尿道のいずれかが出血し、尿に血が混ざることがあります。尿検査では、採取した尿を試験紙で判定することで、尿潜血が起きていないかを調べます。

クレアチニンは、筋肉を動かすためのエネルギー源が代謝されることでできる老廃物です。クレアチニンは、腎臓でろ過されて尿と一緒に身体の外に排出されます。血液中のクレアチニンの濃度が上昇している場合、腎臓の機能が低下して、老廃物の排出がスムーズにできていない可能性があります。クレアチニンの数値は筋肉量が多くなるほど高くなるため、筋力量を考慮して判定します。

胸部エックス線検査

エックス線を使って身体の中の状態を調べ、肺・気管支をはじめとする呼吸器や心臓などに病気による変化がないかを見つけるための検査です。

胸部エックス線診断装置を使い、エックス線を照射して撮影することで、肺をはじめとする臓器の様子がわかります。

肺に形が整っていない丸い白い影がある場合は肺がん、ぼんやりとした白い影がある場合は肺炎・肺結核・気管支炎といったように、エックス線画像が異常が病気を見つける手がかりになります。

貧血検査

血液は、全身に酸素や栄養を届け、二酸化炭素や老廃物を回収する役割を持っています。貧血を起こすと、酸素や栄養が不足し健康状態が悪化します。

貧血検査では、血液を採取して赤血球数・ヘモグロビン値・ヘマトクリット値を測定します。ヘマトクリット値とは、一定量の血液に含まれる赤血球の割合のことです。

赤血球数・ヘモグロビン値・ヘマトクリット値を分析することで、どの種類の貧血なのか検討をつけられます。また、貧血以外の血液の病気を見つけるうえでも重要な検査です。

肝機能検査

血液を採取して、GOT(AST)の濃度を測る検査です。

GOTは肝細胞・腎臓・心筋に多く含まれる酵素で、タンパク質をアミノ酸に分解し代謝を促進する役割を担っています。

しかし、肝細胞や心筋の細胞などで異変が起きるとGOTが血液に溶けだし、高い数値が出ます。そのため、GOTの数値が通常よりも高いと、肝機能障害や心筋梗塞が疑われます。

血中脂質検査

血中脂質検査は、血液を採取して総コレステロール定量・HDLコレステロール・LDLコレステロール・中性脂肪の数値を測定する検査です。脂質異常症(高脂血症)や動脈硬化などの生活習慣病の疑いがあるかを調べる目的で行います。

総コレステロール定量とは、HDLコレステロールやLDLコレステロールなど血液中の全てのコレステロール量を合計した数値です。コレステロールは細胞との栄養のやり取りなど、健康維持に欠かせない成分ですが、多すぎると動脈硬化などを引き起こします。

HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれ、細胞が使い切れなかったまたは動脈の壁に付着しているコレステロールを肝臓に戻す役割を担っている成分です。HDLが不足すると、動脈の壁に付着しているコレステロールを回収しきれず、動脈硬化の原因となります。

LDLコレステロールは、「悪玉コレステロール」とも呼ばれており、肝臓でつくられたコレステロールを全身に運搬する働きがあるLDLリポたんぱくに含まれています。しかし、量が多すぎると動脈の壁にたまり、動脈硬化のリスクを高めてしまいます。LDLコレステロールの数値は、さまざまな病気を見つける重要な手がかりです。

中性脂肪は、体内に存在する脂肪で、糖質が不足した場合は活動のエネルギー源として使われます。しかし、使い切れなかった中性脂肪が多くなりすぎると、動脈硬化の原因となります。

血糖検査

糖尿病などの病気を見つけるための検査です。

血糖は、血液中に含まれるブドウ糖のことで、活動時の主なエネルギー源として使用されています。血糖値は、血液中に含まれる糖分の量をあらわす値です。食事や運動、入浴などによって常に変動しています。血糖値が高すぎる場合は、糖尿病予備軍・または糖尿病にかかっている可能性があります。

健診では、検査前日の夜から絶食して翌朝に血液を採取し、空腹時の血糖値を調べるのが一般的です。

心電図検査 

心電図検査は、心臓の病気がないか調べるために行います。

心臓は、心臓の筋肉である心筋が収縮と拡張を繰り返すことで、血液を全身に循環させています。心電図は、心筋が収縮するときの電気刺激をとらえて、時間の経過による変化を記録したものです。

心電図検査では、電極を胸や両手足・足首につけて電気刺激の状態を把握します。

心電図に異常が見つかった場合、心臓病の可能性があります。

その他オプションで追加できる検査

上記以外にもオプションで検査を追加し、さらに詳しく身体の状態を知ることができます。追加できる主な検査について解説します。

甲状腺

甲状腺とは、のどぼとけの下に位置する臓器で、新陳代謝や成長に欠かせない甲状腺ホルモンを分泌しています。

甲状腺検査では、血液を採取し、甲状腺ホルモンやその分泌を促すホルモンの量を測ります。甲状腺ホルモンの量が多くなるバセドウ病、甲状腺ホルモンの量が減る橋本病など、甲状腺に関連する病気・異変の診断をするうえで重要な検査です。

NT-proBNP

NT-proBNPは心臓に負荷がかかり続けると、心臓から分泌される物質です。血中濃度の値が大きいほど、心臓が弱っている可能性も高いと考えられます。

血液検査でNT-proBNPの血中濃度を測ることで、心不全の可能性や重症度を調べられます。心不全は心臓の機能が低下する病気です。進行性の病気で、息切れ・むくみなどの症状が出て、次第に全身の状態が悪化し、寿命が縮む原因となります。

生活習慣病が原因で起きる場合が多く、NT-proBNP検査を受け、早めに食事や運動に気をつけることで予防・改善につながります。

ビタミンD

ビタミンDは、食事で摂取したカルシウムの吸収を助ける役割を持つ栄養素です。ビタミンDが不足していると、骨が十分に強くならず、将来骨折するリスクが高まります。

血液検査によってビタミンDが不足しているかをチェックし、日光にあたる・魚などビタミンDを多く含む食材をとるといった対策をすることで、骨の強さを維持できます。

健診と検診の違い

健診とよく似ていて間違われやすい言葉として「検診」があります。検診は、特定の病気を見つけるために行う検査のことです。

特に、がんをはじめとする初期のうちは自覚症状が少ない病気を早期発見・早期治療するのに効果的です。早期発見・早期治療をすることで病気が治る可能性が高まるため、自治体が実施する検診の数や種類も増えています。

健診と人間ドックの違い

人間ドックとは、個人で受けられる健診の一種です。病気の予防や早期発見のために行われており、高度な検査機器を使用することで、全身の状態を詳しく検査できます。

健診との主な違いについて解説します。

目的

人間ドックの目的は、精密な検査によって病気や病気の前兆を早期発見し、すみやかに治療や予防につなげることです。一般的な健診よりも検査範囲が広く、特定の病気を見つける検診の側面もあります。

健診でも体の異常は発見できますが、「肥満だと診断されたので、食事や運動を改善する」といったように予防がメインです。

継続的に人間ドックを受けることで、病気が悪化する前に治療ができ、重症化を防げます。

検査項目数

人間ドックは、身体測定など検診で実施する検査項目に加え、超音波検査なども受けられます。健診の検査項目が10数項目くらいなのに対し、基本の検査だけでも50項目前後あります。

自分が気になる点の検査をオプションで追加したり、さらに精密な検査を行ったりと、健診よりも自由度が高い点が特徴です。

費用の目安

健診と人間ドックでは、人間ドックの方が費用が高くなります。会社員が健診を受ける場合、勤務先が費用を全額または一部補助してくれるため、無料から数千円くらいと費用をおさえられます。勤務先が指定する医療機関以外で受診する場合でも、5,000〜15,000円くらいが相場です。

人間ドックは、日帰りで受けられる1日ドックと泊まる必要がある2日ドックがあります。2日ドックの方が検査項目が多いため、費用が高額になります。

1日ドックの費用は、男性が30,000〜50.000円、女性が45,000〜70,000円が目安です。2日ドックの費用の目安は、男性が60,000〜80,000円、女性が70,000〜100,000円です。

女性の方が男性よりも費用が高いケースが多いのは、乳がんや子宮がんといった女性特有の病気の検査を追加するケースが多いためです。

法的な義務

健診は、法律で検査項目や頻度が定められています。1年に1回、決まった検査を受けます。会社員の場合は、健康診断の受診が義務化されているので、毎年受けなければいけません。

人間ドックは任意で受ける検査のため、決まりはありません。毎年必ず受診する必要はなく、検査項目も自由に追加できます。

検査結果の説明

健診は、検査結果を記載した用紙が後日送られるケースがほとんどです。人間ドックであれば、検査結果が出た後に医師から直接説明を受けられる場合も少なくありません。

健康状態の説明やアドバイスを受けることで、生活習慣の改善や治療など今後の対策に役立てられます。質問もできるので、不安や悩みを解消できるのもメリットです。

健診と比べて人間ドックの方が、検査結果に基づいた対策を取りやすいといえるでしょう。

まとめ

健診は、検査によって身体の健康状態を総合的に確認し、病気を予防するためのものです。大きく、法定健診(一般健康診断)・特定検診・任意健診の3種類に分類されます。

健診の検査項目は、問診・身体測定・視力検査・聴力検査など基本的なものだけで10項目以上あります。

健診と間違われやすい言葉として検診があります。検診は、特定の病気を見つけて治療につなげるためのものです。

健診の一種である人間ドックは、より精密な検査によって身体の状態を把握し、病気や病気の予兆を見つける目的で行われます。健診と比べ、検査項目数が多い・費用が高いといった特徴があります。

このように、身体の状態を調べる検査は多数あります。自分の健康状態や年齢などを踏まえ、目的に合ったものを選びましょう。

ページトップへ