検査のいろいろ

特定の病気を早期発見するための「検診」

検診は特定の病気を見つけるためのもの

検診とは、ある特定の疾患を発見するために行われる検査のことです。似た言葉である健診は、健康検査または健康診断を略した言葉で、全身の健康状態を確認し予防に役立てるために行う総合的な検査です。

検診の代表的なものとしてがん検診があり、広く行われています。

がん検診の種類

がん検診には、主に自治体が住民に対して行う検診である「対策型がん検診」と人間ドックをはじめとする「任意型がん検診」があります。

 

それぞれの特徴を紹介します。

対策型がん検診

対策型がん検診とは、がんの死亡率を下げる目的で行うがん検診のことです。がんは日本人の死亡原因の上位であり、重点的な対策が必要です。

 

自治体の住民などの集団に対して検診を行い、がんの疑いのある人を見つけ、早期治療・早期発見につなげます。対策型検診の主なものは、市町村などの自治体が行う「住民健診」、職場が実施する「職域検診」です。

 

厚生労働省が定めた「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づき、「5大がん検診」である、胃がん検診・大腸がん検診・肺がん検診・乳がん検診・子宮頸がん検診を行います。検査は、科学的に有効だと認められている方法で実施されなければいけません。

 

公的補助金が出るため、無料または少ない自己負担で受診できるのも、対策型がん検診の特徴です。

 

任意型がん検診

任意型がん検診は、人間ドックなど個人が任意で自分の死亡リスクを軽減するために受ける検診です。

 

対策型がん検診の検査内容が明確に定められているのに対し、検査項目・対象年齢・受診間隔などのルールは特にありません。検査内容は医療機関によってさまざまで、自分で選ぶことができます。また、受診のタイミングも任意です。検査のメリット・デメリットを知り、よく検討してどの検査を受けるか判断しましょう。

 

検診費用は原則的に自己負担で、医療機関によって異なります。加入している健康保険組合や自治体の国民健康保険によっては、補助金・助成金を受けられるケースもあります。

 

対策型検診と任意型検診の違いを比較

ここでは、5大がんにおける対策型検診の検査項目と任意型検診の検査項目を比較します。任意型検診の方が、検査の数や種類が多く、より高度な検査が実施される傾向にあります。ただし、自治体によっては対策型検診であっても、任意型検診で行われる検査を受けられます。

 

年齢やがん発生リスクに合わせて、どの検診・検査を受けるのか選びましょう。

胃がん検診

検査項目 対策型検診 任意型検診
対象年齢 40歳以上 希望者(特に定められていない)
受診間隔 胃部X線検査:年1回 / 胃内視鏡検査:2年に1回 任意
検査内容 問診、胃部X線検査(バリウム検査)または胃内視鏡検査 対策型検診の内容に加え、胃がんリスク検診(ABC検査)、腹部CT・MRI検査
胃部X線検査(バリウム検査) 40歳以上対象、年1回ペース 対策型検診の一部、任意
胃内視鏡検査 50歳以上対象、2年に1回ペース 対策型検診の一部、任意
胃がんリスク検査(ABC検査) 実施なし 実施あり
腹部CT検査 実施なし 実施あり
MRI検査 実施なし 実施あり

対策型検診の検査内容は、問診と胃部X線検査(バリウム検査)または胃内視鏡検査です。胃部X線検査(バリウム検査)は40歳以上の人に対し年1回ペース、胃内視鏡検査は50歳以上の人に対して

2年に1回ペースで実施できます。

 

問診は、医師が受診者から健康状態・病歴などをヒアリングして診断の手がかりを得る検査です。

 

胃部X線検査(バリウム検査)では、バリウムを飲んでからエックス線で撮影した画像をもとに、がんの可能性があるかを判断します。

 

内視鏡(胃カメラ)検査は、口から内視鏡を入れて胃の内部を詳しく観察し、異変がないか調べる検査です。がんの有無の判断だけではなく、見つかったがんの広がりや深さを診断できます。胃部X線検査(バリウム検査)で異常が見つかった場合は、精密検査として必ず内視鏡(胃カメラ)検査を実施します。

 

任意型検診では、対策型検診の検査項目に加え、胃がんリスク検診(ABC検査)や腹部CT・MRI検査などを実施します。

 

胃がんリスク検診(ABC検査)は、血液検査によって胃がんの原因となるピロリ菌感染の有無や胃粘膜の萎縮度を調べ、胃がんになるリスクを判定する検査です。

 

腹部CT・MRI検査のうち、CT検査はエックス線を利用して体内を輪切りにした画像を撮影する検査です。肝臓・肺へ転移していないかやがんが周囲の組織・臓器に広がっていないかを確認することで、病期(ステージ)を判定し、治療方針を決める目的で行われます。

 

MRIは磁気を利用して、身体内部の断面をさまざまな角度から画像にする検査です。転移やがんの広がりがないかを診断できます。

大腸がん検診

検査項目 対策型検診 任意型検診
対象年齢 40歳以上の人 希望者(特に定められていない)
受診間隔 1年に1回 任意
検査内容 問診、便潜血検査 大腸内視鏡検査、下腹部CT・MRI検査、PET検査
便潜血検査 実施あり 実施あり
大腸内視鏡検査 実施なし 実施あり
下腹部CT・MRI検査 実施なし 実施あり
PET検査 実施なし 実施あり
追加情報 便潜血検査で異常が見つかった場合は、大腸内視鏡検査を実施する必要がある。 PET検査はがんの有無・転移・広がりの確認だけでなく、治療効果や再発の調査にも使用される。

対策型検診では、問診と便潜血検査を行います。対象者は40歳以上の人で、受診間隔は1年に1回です。

 

便潜血検査とは、便を採取して便に血液が混じっていないかを調べる検査です。がんやポリープなどの病期がある場合、便が移動すると組織が擦れて大腸内に出血を起こすことがあります。便の中にどのくらい血が出ているか調べることで、大腸がんのリスクがわかります

 

便潜血検査で異常が見つかった場合は、精密検査である大腸内視鏡検査を必ず実施しなければいけません。

 

任意型検診では、内視鏡によって大腸内のがんの有無などを調べる大腸内視鏡(大腸カメラ)検査、がんの転移・広がりを調べる下腹部CT・MRI検査、PET検査などを行います。

 

PET検査とは、放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射して、がん細胞が取り込んだブドウ糖の分布を画像化する検査です。1回の検査でほぼ全身の画像を撮影でき、がんの有無・転移・広がりがないかを確認できます。また、がん細胞の活動状態・治療の効果・治療後の再発などを調べられる点もメリットです。

肺がん検診

検査項目 対策型検診 任意型検診
対象年齢 40歳以上 希望者(特に定められていない)
受診間隔 1年に1回 任意
検査内容 問診、胸部エックス線検査、喀痰細胞診 胸部CT検査、PET検査
胸部エックス線検査 実施あり 実施あり
喀痰細胞診 必要に応じて実施 必要に応じて実施
胸部CT検査 実施なし 実施あり
PET検査 実施なし 実施あり
追加情報 胸部エックス線検査では小さながんや薄くしか映らないがんが見つけにくい。 実施なし

対策型検診は、問診・胸部エックス線検査を行います。必要に応じて、喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)も実施します。対象年齢は40歳以上で、年に1回ペースで受診できます。

 

胸部エックス線検査は、胸の部分にエックス線を照射して、画像を撮影し、肺や心臓などの異常を調べる検査です。肺に影がある場合、肺がんの疑いがあります。喀痰細胞診では、顕微鏡を使ってたんの成分を調べ、がん細胞の有無を確認します。

 

任意型検診では、胸部CT検査、PET検査なども受診できます。胸部CT検査で、体内を輪切りにした画像を撮影することで、胸部エックス線検査では見つけにくい、小さながんや薄くしか映らないがんも見つけられます。肺がんを早期発見するために有効な検査です。

乳がん検診

検査項目 対策型検診 任意型検診
対象年齢 40歳以上の女性 希望者(特に定められていない)
受診間隔 2年に1回 任意
検査内容 問診、乳房エックス線検査(マンモグラフィ) 乳腺超音波検査(エコー)、触診
乳房エックス線検査(マンモグラフィ) 実施あり 実施あり
触診 実施なし 実施あり
乳腺超音波検査(エコー) 実施なし 実施あり
追加情報   乳腺が多い高濃度乳房の場合、乳腺超音波検査が乳がんの発見に効果的。妊娠中でも受診可能。

対策型検診で行う検査は、問診と乳房エックス線検査(マンモグラフィ)です。40歳以上の女性を対象に、2年に1回ペースで実施します。

 

乳房エックス線検査(マンモグラフィ)は、乳病をうすく伸ばした状態で撮影し、異常を見つける検査です。乳房を触っても見つけにくいタイプの乳がんが白い点として映るので、早期発見につながります。

 

任意型検診では、触診や乳房エックス線検査(マンモグラフィ)、乳腺超音波検査(エコー)などを行います。

 

触診では、医師が乳房に触って、しこり・皮膚の異常・乳頭からの分泌物・わきの下のリンパ節の腫れなどの異常がないか確認します。

 

乳腺超音波(エコー)は、超音波を乳房に照射し反射する様子を画像で確認し、乳病内の異変・しこりの性質や状態・周囲のリンパ節への転移の有無などを調べる検査です。乳腺が多い高濃度乳房の場合、乳房エックス線検査(マンモグラフィ)よりも乳がんの発見に効果的な場合があります。また、放射線を使用しないため、妊娠中でも受診できます。

子宮頸がん検診

検査項目 対策型検診 任意型検診
対象年齢 20歳以上の女性 希望者(特に定められていない)
受診間隔 2年に1回 任意
問診 実施あり 実施あり
視診 実施あり 実施あり
内診 実施あり 実施あり
子宮頸部の細胞診 実施あり 実施あり
コルポスコープ検査 必要に応じて実施 必要に応じて実施
HPV検査 実施なし 実施あり
経膣超音波検査(エコー) 実施なし 実施あり
追加情報 実施なし HPV検査は予防・早期発見に有効。経膣超音波検査は子宮や卵巣の異常を確認するために行われる。

対策型検診では問診・視診・内診・子宮頸部の細胞診を行い、必要に応じてコルポスコープ検査も実施します。対象者は20歳以上の女性で、受診間隔は2年に1回です。

 

視診は、膣鏡(クスコ)入れ、子宮の入口の状態を調べ、おりものの状態や炎症の有無を確認する検査です。

 

内診では、医師が片方の手の指を膣に入れ、反対の手でおなかを押さえ、はさむようにして触って、腫れなどの異常がないか調べます。

 

子宮頸部の細胞診は、子宮頸がんの発生しやすい子宮の入り口や膣部分の表面の粘膜から細胞を採取し、異常な細胞がないか顕微鏡で確認します。

 

コルポスコープ検査は、コルポスコープ(膣拡大鏡)を用いて、子宮の入り口や膣の表面を拡大して、詳しく調べる検査です。異常が見つかった場合は、組織の一部を採取して顕微鏡でがんかどうかを確認します。

 

任意型検診で実施する検査は、内診や子宮頸部の細胞診、HPV検査、経膣超音波検査(エコー)などです。

 

HPV検査は、細胞を採取して子宮頸がんの原因となるHPVへの感染を調べる検査です。HPVに感染してから、子宮頸がんに進行するまでは長い年月がかかるので、定期的に検査することで、予防・早期発見につながります。

 

経膣超音波検査(エコー)では、膣のなかから超音波を照射し、子宮や卵巣を観察して異常がないか確認します。

その他の検診

5大がん検診以外の検診で、代表的なものとして肝炎ウイルス検診と前立腺がん検診があります。内容について解説します。

肝炎ウイルス

肝炎ウイルスに感染することによって発症する肝炎を、ウイルス性肝炎といいます。肝炎を引き起こす主なウイルスは、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスです。

 

B型・C型肝炎ウイルスは主に血液によって感染し、感染したウイルスの種類によって、B型肝炎、C型肝炎などと呼ばれます。肝炎ウイルス検査では血液検査を行い、肝炎ウイルスに感染しているかや肝炎ウイルスの抗体があるかなどを調べます。

 

肝炎にかかると、全身のだるさ・食欲不振・吐き気・嘔吐などの症状があらわれます。悪化すると肌や白目が黄色くなる黄疸(おうだん)が出ます。肝炎による炎症を繰り返すことで、肝臓が硬くなる肝硬変を経て、肺がんへと進行するケースが少なくありません。

 

肝炎ウイルスを調べて肝炎を早期発見・早期治療することで、肝がんを予防できます。

前立腺がん

前立腺は、膀胱の下にある生殖器で男性にしかありません。前立腺がんの検診では、直腸診・血液検査・超音波検査などを行います。

 

直腸診は、肛門から指を入れて触診し前立腺の状態を確認する検査です。ただし、がんが小さい場合や位置によっては、診断がつかない場合があります。

 

血液検査は、前立腺でつくられるたんぱく質である「前立腺特異抗原(PSA)」の血中濃度を測定する検査です。前立腺特異抗原(PSA)の濃度が一定以上の場合は、前立腺がんの疑いがあります。

 

超音波検査は肛門から専用の機械を入れ、超音波をあてて、前立腺の形や大きさを調べ、がんができていないかなどを判定します。

まとめ

検診とは、特定の病気を早期発見するために行う検査のことです。代表的なものとして、がん検診があります。

がん検診には、自治体や職場が所属する人たちの死亡率を減少させるために行う対策型検診と個人が自分の死亡リスク軽減を目的に受診する任意型検診があります。

対策型検診に、胃がん検診・大腸がん検診・肺がん検診・乳がん検診・子宮頸がん検診の5種類の検診があります。

任意型検診は、同じ種類のがんについての検診であっても、対策型よりもより詳しく検査できる傾向にあります。

5大がん検診以外の検診には、前立腺がん検診や肝炎ウイルス検診などがあり、病気の早期発見・早期治療に効果的です。

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