甲状腺疾患と検査
その症状甲状腺が
原因かもしれません
おさえておきたいPOINTS
- 甲状腺の異常は気づきにくいため、健康診断などで甲状腺機能検査をオプション検査することで早期発見につながります。
- 甲状腺ホルモンは多すぎても、少なすぎても体の不調につながる重要なホルモンの一つです。
甲状腺ってなに?
のどぼとけの下あたりに位置する臓器です。新陳代謝や成長に必要な【甲状腺ホルモン】を分泌して、体の調子を整えています。
甲状腺ホルモンが多いと
イライラや、動悸、多汗や手の震えなどの症状が出ることがあります。
外見的には眼球が突出したり、首が腫れたりすることがあります。
甲状腺ホルモンが少ないと
肌がかさつき、無気力、便秘、寒がりになるなどの症状が出ることがあります。
外見的にはむくみや体重増加、眉毛が抜けたりすることがあります。
甲状腺の病気はわかりにくい!?
甲状腺ホルモンの異常による体の不調は、「不定愁訴(ふていしゅうそ)」とよく似た症状があらわれるので正しく診断されない場合があります。
不定愁訴:「イライラ」「疲労感」「何となく体調が悪い」など体のあちこちに症状が出るが、主観的な訴えが強く、検査しても客観的な病気の原因が見つかりにくい状態。
なぜ甲状腺ホルモンが多くなったり少なくなったりするの?
甲状腺ホルモンの分泌は主に脳と甲状腺がかかわっていて、適量の甲状腺ホルモンが体内に行き渡るように調節されています。そのため、脳や甲状腺のどこかに異常があると正常な調節ができなくなり、甲状腺ホルモン量に過不足が生じることがあります。
以下に代表的な甲状腺の病気を紹介します。
甲状腺ホルモンが多くなる甲状腺の病気
バセドウ病:体の防御機能として働く“抗体”が甲状腺を刺激してしまい、甲状腺ホルモンが過剰に産生されてしまう病気です。
甲状腺ホルモンが少なくなる甲状腺の病気
橋本病:体の中にある“抗体”が甲状腺を攻撃してしまい、炎症が起きている病気で、慢性甲状腺炎ともいいます。病気が進むと甲状腺ホルモンの分泌が低下していきます。
甲状腺の病気に気づくことはできる?
甲状腺の病気では首が腫れてくることがあり、それで気づくことがあります。しかし、目立った症状がなく、自分では気づきにくい場合も多くあります。その場合は簡単な検査を実施すると甲状腺の状態を確認できます。かかりつけ医や健康診断を受診される際にご相談ください。
甲状腺の病気を放置するとどうなるの?
不妊や流産、早産のリスクが高くなります。
妊娠初期では甲状腺ホルモンが少ないままだと胎児の発育に影響が出ることも考えられます。
その他にも甲状腺ホルモンの分泌が過剰になっている状態が長く続くと、不整脈や心不全などを発症する可能性があります。
バセドウ病で心房細動(不整脈の一種)が発症すると血栓症(血の塊で血管が詰まる)を誘因する可能性があります。
甲状腺の検査ってどういうもの?
<甲状腺機能検査>
- 甲状腺機能の異常に気づくためには、甲状腺ホルモンや分泌に関わるホルモンの⾎液検査が重要です。
- 甲状腺ホルモン:FT4、FT3
- 分泌を促すホルモン:甲状腺刺激ホルモン(TSH)
<機能検査で異常が見られた場合>
専門病院などで、以下のような詳細な検査を行い確定診断を行います。
血液検査:病因検査(抗Tg抗体、抗TPO抗体、抗TSH受容体抗体)
画像検査:甲状腺超音波検査、アイソトープ検査
病理検査:穿刺吸引細胞診
気になる症状があったら
甲状腺機能検査は多くの健診機関でオプション検査が追加できます。
多くの医療機関でも対応ができる検査のため、気になる症状がある方は、かかりつけ医または甲状腺専門医へご相談ください。
監修
伊藤病院 内科部長 渡邊奈津子 先生