新型コロナウイルス

新型コロナウイルス
身近な感染症になりました

おさえておきたいPOINTS

  • 新型コロナウイルス感染症は発症前や無症候者からも感染します。
  • 新型コロナウイルスを検出する検査には、PCR検査、抗原定量検査、抗原定性検査があります。
  • 抗体検査は、過去の感染歴やワクチンに対する反応を知る検査です。研究用試薬であり、診断には使えません。

新型コロナウイルスとは・・・

コロナウイルスは一般的な風邪の原因ウイルスの一つです。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、コロナウイルス科の中でもサルベコウイルス亜属に属しています。コウモリに感染するコロナウイルスを祖先に持つという説もありますが、正確なところはわかっていません。
2019年12月初旬に中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから、 わずか数カ月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となりました。国内でも2020年1月15日に最初の感染者が確認されました。

出典︓アメリカ国立アレルギー・感染症研究所
(National Institute of Allergy and Infectious Diseases)

王冠(=コロナ)のように見えることから、コロナウイルスと命名されました。

どうやって感染するの?

感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等のときに排出される、ウイルスを含む飛沫やエアロゾル※1を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接接触することにより感染します。
一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。
また、ウイルスが付いたものに触った後、手を洗わずに、目や鼻、口を触ることにより感染することもあります。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています。

※1飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子

感染するとどうなるの?

新型コロナウイルスによる症状は、人によって異なりますが、ほとんどの感染者では以下の『よくある症状』のような軽度から中等度の症状であり、入院せずに回復します。症状が出ない場合もあります。

感染後、すぐに具合が悪くなることはありません。ウイルスは感染後に増殖し、しばらくしてから症状は現れます。この感染してから症状が現れるまでを潜伏期間といいます。潜伏期間は平均 3~6 日です※2

新型コロナウイルスでは、発症の2日前から発症後7~10日間程度まで他の人に感染させる可能性があるとされています※2。特に、発症の直前・直後でウイルス排出量が高くなり、無症状病原体保有者(症状はないが検査で陽性だった人)からも、感染する可能性があります。

重症化する方は、普通の風邪症状が出てから5~7日程度で、症状が急速に悪化し、肺炎になります。新型コロナウイルスによる肺炎が重篤化した場合は、人工呼吸器など集中治療が必要となり、季節性インフルエンザよりも入院期間が長くなる事例が報告されています。

新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方、妊娠後期の方です。重症化のリスクとなる基礎疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満などがあります。喫煙も重症化のリスクとなります。

※2潜伏期間や他の人に感染させる可能性がある期間、症状はウイルスの変異株によって違うことがあります。

新型コロナウイルスに関する検査

ウイルス検査
抗体検査
現在感染しているかを知る検査

現在感染しているかを知る検査には、PCR検査と抗原検査があります。
ウイルスのRNAを検出するのがPCR検査、蛋白を検出するのが抗原検査です。ウイルスが検出されれば、新型コロナウイルス感染と診断されます。
感染を早く認識し、他者に移さないためにも役立ちます。

ウイルスを検出するための検査では主に鼻をぬぐった綿棒で検査をします。
医療機関では鼻咽頭(鼻の奥)をぬぐいますが、自己採取では入口から2cmほどのところ(鼻腔)をぬぐいます。
自己採取の方法は以下もご参照ください。

PCR検査

新型コロナウイルスはウイルスの遺伝子配列となる核酸(RNA)を持っています。PCR検査は、ウイルスのRNAを部分的に増幅して、検出する、非常に感度の良い検査です。

抗原検査

ウイルスのRNAが巻き付く蛋白(ヌクレオカプシド蛋白)は、新型コロナウイルスの中で最も量の多い蛋白で、抗原検査ではこれを検出しています。
抗原検査には、抗原定量検査抗原定性検査があります。

抗原定量検査

測定装置が必要ですが、PCR検査の次に感度がいい検査です。病院など設備の整っている施設で行われ、大量検体処理が可能です。

抗原定性検査

カートリッジに検体(鼻をぬぐった綿棒を専用の液に浸した試料)を滴下し、出てきたラインを目で確認し結果を判定します。定量検査よりも感度は劣りますが、誰でもすぐに検査できるのが利点です。2022年9月よりOTC製品としても販売を開始しました。体調が気になる場合等のセルフチェックに容易に使用できます。

OTC製品とは、
『一般用検査薬』として国が承認した製品のことです。ドラックストアやインターネット等で購入が可能です。新型コロナの検査キットは「研究用」ではなく「国が承認したキット」を使いましょう。

過去に感染したことがあるかどうかを知るヌクレオカプシド(N)蛋白抗体検査

体内にウイルス等の異物が入ると、ヒトの体の中では、その異物に対する抗体が作られます。この抗体は異物に特異的に結合することで、体を守ろうとします。

2022年9月現在国内で承認されているワクチンには新型コロナウイルスのN蛋白は含まれません。このためN蛋白に対する抗体を持っているということは、新型コロナウイルスに感染したことがあるということを意味します。
弊社のN蛋白抗体検査は感染後、1年半以上経過しても9割近くの患者さんにおいて、抗体陽性が持続していたという報告※3もありますが、どのくらい持続するのかはまだ分かっていません。また検査法によっても持続性は異なります。

※3Nakagama, Y. et al. (2022).Journal of Clinical Microbiology Vol. 58, No. 10. Detecting Waning Serological Response with Commercial Immunoassays: 18-Month Longitudinal Follow-up of Anti-SARS-CoV-2 Nucleocapsid Antibodies

抗体検査は研究用試薬です。診断等に使用することはできません。

ワクチンに対する反応を知るスパイク(S)蛋白抗体検査

S蛋白はウイルスが体内に侵入するのに重要な役割を果たす蛋白であり、2022年9月現在承認されているワクチンは、S蛋白に対する抗体を産生させます。このため、ワクチンに対する反応を知るためにS蛋白抗体検査が利用されています。
S蛋白抗体価は、ワクチン接種によって上昇しますが、1ヵ月ほどでピークを迎えたのち、時間経過とともに減少することが分かっています。さらにワクチン接種2回目よりも3回目接種後の方が高くなることが分かっています。

ワクチン接種後のスパイク抗体量の変動(中央値)について、千葉大学の研究で分かったことがあります。

ワクチン2回目接種から8ヵ月後の抗体量は1/3に減少していました。

ワクチン3回目接種後の抗体量は、2回目接種後の約10倍に上昇していました。

【測定条件】
  • 新型コロナワクチン:ファイザー社
  • 測定タイミング:ワクチン3回目接種 2-4週間後
  • 検査試薬:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 Elecsys Anti-SARS-CoV-2 S RUO(研究用試薬)
  • 母集団:千葉大学医学部附属病院 医療従事者
    • 1回目接種前に採血…2,015名(男性 719名、女性1,296名、21才~72才)
    • 2回目接種後に採血…1,774名(男性 606名、女性1,168名、21才~72才)
    • 3回目接種前に採血…1,443名(男性 483名、女性960名、21才~72才)
    • 3回目接種後に採血…1,372名(男性 439名、女性933名、21才~72才)

S蛋白はウイルスにも含まれているため、感染した場合にも反応がみられます。
このためワクチン接種に加え新型コロナウイルス感染を経験した場合、『ワクチン + ウイルス感染』の反応をみていることになります。
なお、感染防御に必要な抗体量について、 いくつ以上あれば大丈夫という 基準になるものは現在ありません。

抗体検査は研究用試薬です。診断等に使用することはできません。

感染予防

マスク無しの会話や3密(密閉・密集・密接)が感染拡大リスクとなっています。
体調が悪いときは不要・不急の外出を控えることなど、新型コロナウイルスに感染していた場合に多くの人に感染させることのないように行動することが大切です。
マスクの着用は個人の判断が基本となりますが、周囲の方に感染を広げないために、受診時や医療機関・高齢者施設などを訪問する時、通勤ラッシュ時など混雑した電車・バスに乗車する時は、マスクを着用しましょう。
またご自身を感染から守るため、重症化リスクの高い方が感染拡大時に混雑した場所に行く時は、マスクの着用が効果的です。

ワクチンを接種するだけでは感染を完全に防ぐことはできません。

その要因として、ウイルス変異というウイルス側の要因と、ワクチン接種によって上昇した抗体価も経時的に減少することから予測される、ウイルスに対するヒトの免疫力低下という宿主(ヒト)側の要因などが考えられます。

ワクチンによる免疫の獲得に加え、手洗い、状況に応じたマスクの着用、換気、3密の回避などを心がけ、体調不良時に出歩くことはしないようにしましょう。

監修

国立大学法人 千葉大学大学院医学研究院 アレルギー・臨床免疫学 教授 中島裕史先生